周波数特性測定と調整
ー 2008/05/12 ー
今まで聴感で調整を行ってきたが、そろそろ科学的(?)に測定器を使って追い込みをしようと考えていた。
幸い測定器としては、ワーブルトーン発生装置を搭載したFMR-1000(サンワ)がある。
FMR-1000は、Sound Response & mV の測定器で、別名は Wireless Souund Response Tester とされ、25Hzから20KHzまでを30に区切ってワーブルトーンとピュアトーンをFM波に乗せて送ることが出来る。発売当時はFMチューナーが普及していたのでノンワイヤで音出しが出来て便利だった。もちろんオンワイヤでも信号を取り出せる。
付属品は特になく、周波数特性がフラットの周波数特性測定用マイクがあれば直ぐ使える物だった。
これに使うマイクは、当時テクニクスがSH-8000という周波数特性測定セットを発売していて、このセットの中に入っていた周波数特性用のコンデンサーマイクが安価で性能も良かったので、これを頼んで補修部品として取り寄せた物であった。型番は、RP-3800Eという。
さて実際に測定しようと、機材を探すと、マイクだけがどうしても見つからない。マイク関係は、晩年の営業運転蒸気機関車の音録りに使った1970年代半ばと1980年代に旧型国電の吊りかけモーター音の録音以降は、使った覚えがなかったため、5、60mはあろうかというマイクの延長ケーブルなどはどこへ入ってしまったのか全く記憶がない。
仕方がないので最近の製品から探すと、ベーリンガーECM8000というのが安価で性能も良いということがわかった。購入するつもりで調べていたら、+15V~+48Vのファンタム電源が必要ということで、適当な電源が見つからず、二の足を踏んでいた。
そうこうしているうちにヤオフクにSH-8000が出品されているのを見つけた。
マイクだけが欲しいのではあるが、安ければ本体ごと持っていても良いかな、と考えて入札をした。幸い落札できたが、マイクだけと考えると少々高い買い物となってしまった。
先週の5月9日に到着。
早速FMR-1000を持ってきてオンワイヤで接続し音出しをすると、20年くらい使っていなかったためか、ガリやノイズが乗り、余りよい状態でない。そうなれば、折角購入したからとばかり、本体ごと(SH-8000)使ってみることにした。
またグラフを書くのに片対数グラフが必要である。たぶん1ヶ月前ほどに、こんなところに保管してあると、引っ張り出しておいたのだが、今度はそれをどこにおいて置いたかが思い出せない。
仕方がないのでネットで検索するとエクセルで書けるというのを見つけた。だが悲しいかな、うまく書けない。と、いうより解説文章から実践の部分に進めない。そして代わりに、専用ソフトのが良いというヒントから、お試し版のグラフソフトをダウンロード。しかし、これもとっかかりからつまずいて、先に進めず。
結局、またエクセルに戻り、数値だけ入れれば自動的にグラフを書いてくれるという、サンプルをみつけ、これを使うことにした。
これ以外にも、高さが1200mmくらいまでのばせるマイクスタンドやマイクホルダーを探したり(SH-8000には簡易型のスタンドしか付属していなく、高さがまちまちな当方のスピーカーに合わせるには、伸縮自在のマイクスタンドとマイクホルダーが必須である)スタンドは、ストロボ用のスタンドで代用させるために、マイクホルダーが取り付けられるダボを用意したりと、色々大変だった。
やっと! 最初に、ユニットごとの特性を測定。
次に2ユニットごとに合成の特性を測定。そして最後に総合特性を測定した。その結果からチャンネルディバイダーの調整をする。
測定は、最初、マイクをそれぞれのユニットの軸上になるように置き、距離は全て500mmとした。測定のし易さの関係で右チャンネルのみで測定した。
途中で気がついたのは、右チャンネルだけで測定するようにしていなく、左チャンネルからも音が出ていて無指向性のマイクが両方の音を拾ってしまっていることだった。
FMR-1000はモノラルであるが、SH-8000は、両チャンネルから信号が出るため、そのままだと両チャンネルが鳴ってしまう。
また測定値から見ると、80、800、8000Hzで暴れ、部屋や回りに置いてある物の影響を濃く受けていることがわかる。またSH-8000の周波数切換時にも針が変動したり、メモに書き込もうとしたりすると、針が動くので、極力体を動かさないようにして測定、書き込みもなるべく同じ体勢のまま行った。
週末の2日間ほとんどフルに使って、測定と調整を繰り返し、どうやらまとまった結果を下に示す。
赤色系が総合特性。
青色系は、グラフィックイコライザーの調整値。(ただし、表示は-10dBとして記入した。)
10KHzから高域がアップしているが、高域補正として(原則的には20KHz以上で行うことらしいが)そのままにしている。
チャンネルディバイダーの設定の最終は、
LOW:
DS-1000zw ~320Hz (LPF:-12dB/oct) Level:±0dB
MID-LOW:
PA-1 320 ~ 800Hz (HPF=LPF:-18dB/oct)Level:±0dB
MID:
LE85 + H400 800 ~ 3200Hz(HPF=LPF:-12dB/oct)Level:-22.0dB
MID-HI:
LE175 + USH 4000 ~ 9000Hz (HPF=LPF:-12dB/oct)Level:-17.0dB
HI:
T925 9000 ~ 40000Hz (HPF:-12dB/oct)
(HPF:9000Hzはネットワークによる)
ミッドのLE85+H400は、H400のカット特性と思われるが、800Hz以下は再生できないことが特性から読み取れる。
(なお、以下3枚の特性表中の1Wの表記はミスプリント。)
LE175 + USHは、USHが3000Hzから使えるということであるが、カーブからは2000Hz位から使えるような雰囲気である。ただし、音色的にはもう少し上からの方が良いのかもしれない。
マイクは20~20KHzの特性を持つとされているが、T925の16KHz近辺に強烈な山が出来るのと、その上の周波数から急激に下がるのは、マイクの周波数特性のためらしい。T925は40KHzまでの再生域を持っているので、できれば40KHz位までピックアップできるマイクが欲しくなる。
なお、T925は、LE175 + USH とともに5KHz以上を担当するチャンデバ出力から、9KHz,12dB/oct -6dB落ちのネットワークにより供給しているが、LE175に比べて10dBほど音圧が高く聞こえている。カタログデーターでは、LE175もT925も、ともに出力音圧は108dBであるため、アッテネーターを組み込まなかったのではあるが、総合特性のグラフから見ても、6~10dBのアッテネーターを組み込んだ方がよいのかも知れない。
全般的にホーンタイプの方が凸凹の少ないスッキリとした特性カーブになる。これは設置している高さがホーンタイプの方が床から離れていて、高い位置に置いてあるのも影響していると思われる。
参考1:
2WayのフルレンジスピーカーPA-1の周波数特性。
参考2:
PA-1をミッドバスとして使用した周波数特性(HPF=320Hz、LPF=800Hz)
参考3:
DS-1000Zwのノーマル(内蔵ネットワークのみ)の周波数特性
参考4:
チャンネルディバイダーのLPF=320Hzを通したDS-1000Zwの周波数特性
グライコの設定は、
部屋の特性を含め(右チャンネルのみで調整)周波数特性がなるべく滑らかにフラットになるように調整した。
5chの再生音(総合特性)は、凸凹感がなくなり、スッキリとした感じである。聞きやすくなったことは確かである。
ただグライコでの調整はものすごい状態なので、しばらくの間、細かく調整が必要かも知れない。
参考5:
ダイアトーンのミッドバス専用ユニット、PM-1637BMの箱無しでの周波数特性。
PM-1637BMは、DS-505のミッドバスとして使われていたユニット。800Hzの落ち込みと4KHzの山が部屋による影響と考えると、ノーフィルターであっても上下とも綺麗に切れていて、繋ぎが楽そうな雰囲気がある。
こちらはDS-505用であるが、当方でミッドバスとして使うのはPM-1644BM(DS-3000用のユニット)で、現在、Linfof工房に制作を依頼している。このミッドバス用のBoxが納品されたあかつきには、PA-1と交換予定である。